ダブルバレル
この表はダブルバレルの簡易戦略をまとめたものです。実践で扱えるようになるために詳細を解説していきます。
使い方
①ベットサイズとレンジの確認
フロップCBを打った後ターンが開かれたら、まずは(表1)を確認します。5種類に分類されたボードの中で該当するものを探し、適切なベットサイズとバリューの下限、ブラフハンドを把握してください。
用語説明
- TPGK…トップペアグッドキッカーの略。キッカーの強いトップペアのこと。
- 今回はキッカーがT以上のものとしておく。
- HCLK…ハイカードローキッカーの略。キッカーの弱いハイカード系のこと。
- 例えば、A5oやQ2sなど。片方がT以上で、もう片方が5以下のハンド。
②ハンドを確認しアクションする
適切なベットサイズとバリューの下限、ブラフハンドを把握したら、自分のハンドを確認します。ここで、バリューレンジまたはブラフレンジに該当するハンドを持っていた場合は指定されたサイズでベット、該当しないハンドを持っていた場合はチェックしてください。
ここで、(表1)に記載されている内容の意図を説明しておきます。
1/3 stackはエフェクティブスタックの3分の1を意味します。つまり、ポットの大きさに関係なくスタックを基準にしてベットサイズを決めるということです。
TPGK+はTPGK以上のハンド全てを指します。つまり、Tキッカーのトップペアを含め、それよりも強いハンドがバリューレンジになります。
ドローやHCLKはペアになっていないもの全てを指します。
各ボードの簡易戦略
①フラッシュボード
具体例
(1)Q♠6♥3♥ T♥
(2)J♥7♥3♥ K♠
フラッシュボードとはフラッシュの存在するボードのことです。1つ目は、ツートーンボードのフロップからフラッシュが完成するようなターンカードが落ちたようなボードです。2つ目は、フロップからフラッシュが存在するようなボードです。今回はどちらのボードもこの分類に該当するものとします。
簡易戦略
- ベットサイズ 50%
- バリューレンジ
- TPGK以上
- ブラフレンジ
- フラッシュドロー(ペアなし)
- HCLK
ターンのフラッシュボードは基本的に安いサイズを使います。ターンは本来75%以上の大きいサイズを使うので、50%サイズはかなり安いサイズと思っておいてください。
そして、ブラフレンジの主要ハンドはフラッシュドローになります。ここではハートが1枚のオフスートハンドですね。
Q♠6♥3♥ T♥
ハンド A♠2♥
例えば、このような最弱のフラッシュドローであってもペアになっていないものは全てベットしてください。
ただし、フラッシュボードではストレートドローはブラフハンドに含まれません。ストレートの価値が低くなるようなボードだからです。
しかし、これではまだまだブラフが足りないので、ピュアブラフが必要になります。
- A♦4♣
- J♣5♣
そこで、このようなHCLKをブラフハンドとして使います。ドローが一切なくヒットしていないハイカードですね。こちらも全てベットしてください。
HCLKはピュアブラフの代表格です。今後も頻繁に出てくるのでしっかりと覚えておきましょう。
- K♦8♦
- 8♣7♣
因みに、このようなハンドはドローがなくヒットもしていないハイカードですが、HCLKではないのでチェックに回してください。HCLKの目安は片方がT以上で片方が5以下のハンドです。
ある程度把握できたと思うので、ここで具体例を見ていきましょう。
(1)Q♠6♥3♥ T♥
このボードで今回の簡易戦略を使った場合、それぞれのレンジを塗り分けると以下のようになります。バリューレンジが青、ブラフレンジが赤、チェックレンジが緑です。
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- QTs、QTo(TPGK)
- ブラフレンジ
- ハート1枚(フラッシュドロー)
- ハートなしのA5oやJ2sなど(HCLK)
ここで、レンジ表の下部にある横長のゲージを見てください。この戦略を使ったときのバリュー頻度とブラフ頻度、そしてチェック頻度が表示されています。バリューとブラフの割合が1:1になってますね。
ターンではバリューとブラフの割合はおおよそ1:1ぐらいが適正値なので、かなりバランスの取れた戦略になっていることが分かります。
別のボードでも試してみましょう。
(2)J♥7♥3♥ K♠
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- KTs、KTo(TPGK)
- ブラフレンジ
- ハート1枚(フラッシュドロー)
- ハートなしのA4oやQ5sなど(HCLK)
ゲージを見ると若干ブラフが多いように見えますね。しかし、この程度であれば概ねバランスが取れていると言えます。
②1枚ストレートボード
具体例
(1)K♠T♥9♥ Q♦
(2)9♦8♣5♠ 7♥
1枚ストレートボードとはハンド1枚でストレートを作ることができるようなボードのことです。1つ目のボードでは、Jを1枚持っていればストレートなり、2つ目のボードでは6を1枚持っていればストレートなります。
簡易戦略
- ベットサイズ 50%
- バリューレンジ
- セット以上
- ブラフレンジ
- 上のガットショット(ペアなし)
1枚ストレートボードではお互いのレンジにストレートが20%ほど存在するので大きいサイズを使うことができません。そして、バリューベットできるギリギリのハンドがセットになってしまうという恐ろしいボードです。
ブラフレンジの主要ハンドは上のガットショットになります。
K♠T♥9♥ Q♦
ハンド A♠2♥
上のガットショットとは、例えばこのようなハンドのことです。
リバーでJが落ちるとボードストレートになりますが、Aを持っていると上のストレートになります。つまり、Jのストレートを逆転できる可能性があるということですね。
このボードではペアになっていない上のガットショットを全てベットしてください。
そして、ツートーンボードの場合はフラッシュドローもペアになっていないものは全てベットしてください。
それでは具体例を見ていきましょう。
(1)K♠T♥9♥ Q♦
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- 99(セット)
- ブラフレンジ
- Ax(上のガットショット)
- フラッシュドロー
バリューとブラフの割合がきれいに1:1になってますね。かなりバランスの取れた戦略になっていることが分かります。
もう1つ見ていきましょう。
(2)9♦8♣5♠ 7♥
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- 55(セット)
- ブラフレンジ
- Tx(上のオープンエンド)
- Jx(上のガットショット)
若干ブラフが多いように見えますが、こちらもかなりバランスの取れた戦略になっていますね。
③ペアボード
具体例
(1)A♣9♦3♥ 9♣
(2)K♠K♥9♥ 3♣
1つ目は、フロップでペアなしの状態からターンで重なってペアができたようなボードです。2つ目は、フロップからペアが存在するようなボードです。今回はどちらのボードもこの分類に該当するものとします。
簡易戦略
- ベットサイズ 50%
- バリューレンジ
- TPGK+
- ブラフレンジ
- ドロー(ペアなし)
- HCLK
ペアボードも基本的に安いサイズを使うことが多いです。お互いのレンジにトリップスが多く存在するからですね。
バリューレンジの下限はTPGKです。ここでは、ペアになっているカードを無視して一番数字の高いカードがヒットしていればトップペアとして扱うものとします。例えば、(2)のボードでは9ヒットをトップペアとします。
ブラフレンジの主要ハンドはHCLKです。ペアボードではドローが少なくなりやすいので、ピュアブラフがメインとなります。
もちろんペアになっていないドローも全てベットしてください。ペアボードはかなりブラフが少なくなりがちなので、これでも若干足りないぐらいです。
それでは具体例を見ていきましょう。
(1)A♣9♦3♥ 9♣
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- ATs、ATo(TPGK)
- ブラフレンジ
- K5oやJ2sなど(HCLK)
- フラッシュドロー
やはりブラフが少ないですね。特にストレートドローが全く存在しないペアボードではブラフ過少になりやすいです。
ブラフを追加したい場合は、85sや76s辺りのハンドをピュアブラフに回すといいですね。
もう1つ見ていきましょう。
(2)K♠K♥9♥ 3♣
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- T9s、T9o(TPGK)
- ブラフレンジ
- QToやJTsなど(ガットショット)
- A2oやT4sなど(HCLK)
- フラッシュドロー
こちらはガットショットがそこそこ存在するので、バランスの取れた戦略になっています。オフスートのストレートドローが存在するようなボードは比較的ブラフ過少にはなりにくいです。
④コネクトボード
具体例
(1)J♥6♠4♠ 5♦
(2)K♠T♥Q♦ 3♥
コネクトボードとはストレートが存在するようなボードのことです。1つ目は、フロップのストレートドローがターンで完成するようなカードが落ちたボードです。2つ目は、フロップからストレートが存在するようなボードです。今回はどちらのボードもこの分類に該当するものとします。
簡易戦略
- ベットサイズ 1/3 stack
- バリューレンジ
- TPGK+
- ブラフレンジ
- ドロー(ペアなし)
このボードでは比較的大きいサイズを使うことができます。ここではスタックの3分の1のサイズを使いましょう。
ポイントは3分の1を超えないようにすることです。なのでやや少なめを意識するといいですね。
なぜスタックの3分の1なのか、SPRが高いときはどうするのかなどベットサイズについてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ブラフレンジの主要ハンドはドローです。フラッシュドローもガットショットも含めペアになっていないものは基本的にベットしてください。
ただし、注意点としてコネクトボードではストレートドローを全てベットしてしまうと激しくブラフ過多になってしまいます。ハンド1枚だけでストレートドローになるので、ドローが大量に存在するからですね。
なので、下のストレートドローは全てチェックしてください。
J♥6♠4♠ 5♦
ハンド Q♥3♥
下のストレートドローとは、例えばこのようなハンドのことです。
この場合はリバーで7が落ちるとストレートになりますが、相手が8を1枚持っていた場合は上のストレートになるので負けてしまいます。
なので、完成形が上のストレートになるようなドローをベットに回すようにしましょう。
コネクトボードの場合は、これでブラフが十分足りている状態になるのでピュアブラフは必要ありません。
それでは具体例を見ていきましょう。
(1)J♥6♠4♠ 5♦
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- JTs、JTo(TPGK)
- ブラフレンジ
- 7x(上のオープンエンド)
- 8x(上のガットショット)
- フラッシュドロー
若干ブラフ過多になっていますね。やはりコネクトボードというのはストレートドローが大量に存在するボードなので、ピュアブラフを全くせずドローハンドのみでブラフしたとしてもブラフが多くなってしまいます。
とはいえ、ブラフが足りてないよりは溢れている方がいいので全く問題ないですね。
もう1つ見ていきましょう。
(2)K♠T♥Q♦ 3♥
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- KTs、KTo(TPGK)
- ブラフレンジ
- Jx(オープンエンド)
- Ax(上のガットショット)
- フラッシュドロー
こちらはバリューとブラフのバランスがかなりいいですね。Aハイでのブラフに抵抗がある人も居ると思いますがしっかりブラフしてください。
⑤標準的なボード
ボードの具体例
(1)K♠6♥3♥ 8♣
(2)J♥6♠3♦ A♦
ここまでで特徴的なボードを4つ紹介してきましたが、最後はそれ以外の全てのボードになります。所謂普通のボードです。1つ目は、フロップのKハイボードからターンでラグが落ちたようなボードです。2つ目は、フロップのJハイボードからターンでオーバーカードが落ちたようなボードです。
簡易戦略
- ベットサイズ 1/3 stack
- バリューレンジ
- TPGK+
- ブラフレンジ
- ドロー(ペアなし)
- HCLK
このボードでも比較的大きいサイズを使うことができます。ここではスタックの3分の1のサイズを使いましょう。
ブラフレンジの主要ハンドはドローです。ペアになっていないものは全てベットしてください。
しかし、標準的なボードはコネクトボードと比較すると遥かにブラフの少ないボードなので、ピュアブラフが必須となります。
ということで、ピュアブラフの代表格であるHCLKも全てベットしてください。
それでは具体例を見ていきましょう。
(1)K♠6♥3♥ 8♣
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- KTs、KTo(TPGK)
- ブラフレンジ
- 97oなど(オープンエンド)
- T9sなど(ガットショット)
- A4oやJ2sなど(HCLK)
- フラッシュドロー
このボードはストレートドローがしっかり存在するのでそこそこブラフ過多になってしまいます。とはいえ、ブラフが足りてないよりは多少溢れているぐらいの方がいいので全く問題ないですね。
ドローの多さに関して言うと、実はフラッシュドローの有無はそこまで大きく影響しません。注目すべきはストレートドローの方なので、数字の並びを意識できるようになるといいです。
もう1つ見ていきましょう。
(2)J♥6♠3♦ A♦
レンジ構成
- バリューレンジの下限
- ATs、ATo(TPGK)
- ブラフレンジ
- KToや75sなど(ガットショット)
- K5oやQ4sなど(HCLK)
- フラッシュドロー
このボードでは逆に若干ブラフ過少になってしまいます。しかし、この程度であれば全然許容範囲かなと思います。
この簡易戦略は自分のレンジに含まれるドローの割合に大きく依存するのでボードによってバランスが変わってきます。
ストレートドローが多いボードではブラフ過多になりやすく、少ないボードではブラフ過少になりやすいということですね。
総括
今回紹介した簡易戦略はある意味『解答』のようなものです。戦略の意図を理解できなくても暗記によって再現できるようになるだけで、ある程度勝てるようなそこそこ強いプレイヤーになることができます。
とにかく再現性の高さを重視したシンプルな戦略なので、その代償としてボードによってはどうしても多少ばらつきが出てしまいます。
とはいえ、非常に優秀な戦略であることは間違いないです。毎回100点を取ることはできないですが、常に安定して80点以上を取り続けることができるようなイメージですね。
簡単な割に非常にバランスの取れた戦略になっているので相手が上級者の場合でも十分戦えるようになります。一方的に搾取されるようなことにはまずならないと思ってもらって大丈夫です。
そして、知識を身に付けてポーカーをもっと深く理解していけば、ここから微調整してさらに精度を高めていくことができます。そのために、まずはこの簡易戦略をマスターしましょう。
冒頭に載せている(表1)を見ながら毎日実践練習することで、身体に染み込ませるように習得していってください。